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武蔵野大学に新しいキャンパスをつくる|浅川竜成さん

文=菅野浩二(ナウヒア) 写真=本人・大学提供、鷹羽康博

浅川竜成(あさかわ・りゅうせい)さん|武蔵野大学スマートインテリジェンスキャンパスプロジェクト デザインチーム
山梨県出身。2019年3月、武蔵野大学工学部建築デザイン学科卒業。2021年3月、武蔵野大学大学院工学研究科建築デザイン専攻修士課程修了。学生時代は海外旅行も楽しんだ。カナダ、アメリカ、イタリア、スペイン、イングランド、ノルウェー、タイ、インドネシア、カンボジアなど多くの国を訪れ、多様な価値観を知った。「学生のうちに、自分とは異なるいろんな価値観を偏見なくフラットに見られるようになったことは、自分の人生にとってとても大きな影響があったと思います」と話す。

学校法人武蔵野大学創立100周年記念事業プロジェクトに携わる

母校で働く浅川さん 母校で働く浅川さん

母校に戻って働いている。武蔵野キャンパスでも有明キャンパスでもない、「スマートインテリジェンスキャンパス(SIC)」の立ち上げに力を注ぐ。

「新しい取り組みに挑戦している部分にはやりがいを感じています」

そう話す浅川竜成さんが携わるのは、学校法人武蔵野大学創立100周年記念事業プロジェクトの一つである「SICプロジェクト」だ。2021年7月に始動したプロジェクトで、2024年の開設を目標とする。インターネット上の仮想世界、いわゆる「メタバース」に新しいキャンパスを構築。自身の分身であるアバターでメタバース空間を自由に動くことができ、サイバー上に設けたキャンパスを活用し、新たな交流や学びの場となる教育環境を提供していく。武蔵野キャンパスや有明キャンパス、あるいは千代田キャンパスもメタバース上に再現し、実際のキャンパスとSICの併用も視野に入れている。

武蔵野大学工学部建築デザイン学科と武蔵野大学工学研究科建築デザイン専攻で学んだ浅川さんがSICプロジェクトチームのメンバーとなったのは2022年7月。大学と大学院でお世話になった工学部長の風袋宏幸教授に誘われたのがきっかけだった。恩師であり上司でもある風袋教授は浅川さんについてこう評する。

「彼の持ち味は頭の中でじっくりと物事を理解する力。コンピュータのようにいろんな仕組みを頭の中でしっかり整理して、自分なりに組み立てて解決に導く能力に長けているので、そういう部分に期待しています」

浅川さんが主に手がけるのはデザインの分野だ。いつもイメージどおりに進むわけではない。壁に突き当たる場面もあるが、試行錯誤しながら乗り越えたときの充実感は何物にも代えがたい。浅川さんは言う。

「自分でいろいろと試しながら新しい技術を学んで、目の前の課題を解決したときは楽しいと感じます。頭の中のイメージが実際にビジュアルで目に見えてできてくると、やはり達成感がありますね」

「2019アジアデジタルアート大賞」で優秀賞を受賞

  • グループで制作した「TRANSITION」の一部

    グループで制作した「TRANSITION」の一部

  • グループ制作の「TRANSITION」では受賞を経験

    グループ制作の「TRANSITION」では受賞を経験

  • 修士制作の「身体の動きに応じて変形する建築」

    修士制作の「身体の動きに応じて変形する建築」

  • 修士制作の一部

    修士制作の一部

  • 修士制作は周囲の状況に応じて物理的に変化するもの

    修士制作は周囲の状況に応じて物理的に変化するもの

  • 修士制作の一部

    修士制作の一部

  • 学生時代は海外旅行も楽しんだ

    学生時代は海外旅行も楽しんだ

  • 海外旅行の資金はアルバイトで貯めた

    海外旅行の資金はアルバイトで貯めた

  • 豊富な海外旅行を通し多様な価値観を知った

    豊富な海外旅行を通し多様な価値観を知った

浅川さんが学んだ武蔵野大学工学部と武蔵野大学工学研究科はデザインテクノロジーの環境が整っている。フォトショップやイラストレーター、CADやBIM、オートデスクといったデザインする際のツールや講義の充実ぶりは日本の大学でトップクラスと言えるほどだ。浅川さん自身も学部時代と修士課程を合わせた6年間での成長を実感している。

「建築に関わるソフトウェアやデジタルテクノロジーなど、とにかく技術の部分で伸びました。例えば、形を決める際にプログラミングを用いて数学的なパラメータを調整しながらデザインを比較検討する3次元の設計手法であったり、3Dプリンターやレーザーカッターなどを利用して思い描いたアイデアを具現化するためのメカニズムを設計するスキルであったり、技術力やそれに伴う問題解決能力がしっかりと身についたと思います」

在学中は「技術の部分で伸びました」 在学中は「技術の部分で伸びました」

SA(スチューデント・アシスタント)やTA(ティーチング・アシスタント)として後輩に教える過程で、自分のなかで整理された部分も大きかったという。インプットとアウトプットを繰り返して習得した技術は、成果としてしっかりと現れている。2016年3月には「建築文化週間全国学生ワークショップ 2016」で特別賞を受賞。グループで制作した「TRANSITION(トランジッション)」という映像作品で「世界に応答する建築」というコンセプトを「形状が移り変わる空間」として表現し、2020年3月には「2019アジアデジタルアート大賞」のインタラクティブアート部門で優秀賞に輝いた。

「自分の得意なこと、かつ好きなことだったから、夢中になれた部分もあったと思います」と振り返る浅川さんは、修士制作で「身体の動きに応じて変形する建築」を生み出した。この制作は「TRANSITION」を通じて得た知見をさらに等身大のスケールへ発展させたものであり、周囲の状況に応じて物理的に変化する建築空間へ向けた試行の一つである。

将来的には自分でブランドを立ち上げてみたい

現在取り組むSICプロジェクトは、通信教育、社会人の学び直し、生涯学習、外国人向けの日本語教育など、さまざまな教育研究ニーズに対応できるメディア教育の創造も目的に掲げており、さらに学びの幅を広げていく。この武蔵野大学の歴史に残る事業を、浅川さんは楽しんでいる。

「最先端の技術をアップデートしながら使えるという意味では、自分に向いている仕事だなと感じています。自分の技術でSICを充実した空間にすることができたらいいなと考えています」

SICは2024年に開設予定。浅川さんはその後も見据えている。夢見ているのは、建築デザイン学科と建築デザイン専攻で学んだ技術やデザイン力を生かす将来だ。「デザインは付加価値。特に機能を邪魔しないデザインが大切です」と話し、続ける。

「武蔵野大学でデザインと機能の両方の大切さを学べたのは良かったなと思っています。将来的には自分でブランドを立ち上げて、自分の技術を活用したプロダクトを何かつくっていけたらいいかなというふうに少し思っています」

子どものころ、図工が得意だった。その延長線上に建築デザインの学びや現在の仕事があり、その先に大きな夢が待っている。

※記事中の肩書きは取材当時のものです。また、学校名は卒業当時の名称です。

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