校友トピックス

令和5年11月の聖語

静謐の聖語板に見出してきたこと

有明キャンパス正門、武蔵野キャンパス正門・北門に設置されている「聖語板」を覚えていますか?
先人のことばを月替わりに掲示しています。
在学時、何気なく見過ごした言葉、瞬時に腑に落ちた言葉、場面を具体的にイメージできる一文、また、思わずその意味を自身に問い掛けた経験はありませんか。
そして、1カ月間、朝に夕に目にすることで、じっくりと心に沁みこんでくる言葉がありませんでしたか?
今も変わらず、「聖語板」は学生に、教職員に、大学を訪れる人に静かに語りかけています。

11月の聖語

「心の底を言い表す言葉をもち得ないまま 人と人とは交わりつづけている」

岩本泰波

今回は文学博士の岩本泰波氏の言葉です。「嫌われたくない」「否定されるのが怖い」といった理由から心の底を言えない場合もありますが、「言い表す言葉をもち得ない」というところがポイントだと思います。

「心の底」とは、『大辞林』によると「①心の奥。意識の底。②偽りのない心の中。心底。」を指します。そもそも自分の考えていることや思いについて、きちんと「言い表す言葉」を持っている人が、どれほどいるのでしょうか。

自分が話したことを後から思い返して、「本当はこう言いたかったのに」と悔やんだ経験は誰にでもあるはずです。それでも「人と人とは交わりつづけている」のは、社会で生きていくうえでやむを得ないといえばそれまでですが、せっかく人と交わるならば自分も他人も心地よくありたいものです。そんな時に重要となるのが「傾聴力」です。

ビジネスなどのコミュニケーションでは「話す力」や「伝える力」が重要視されていますが、「傾聴力」があると話し手を問わずにコミュニケーションが円滑に進みます。たとえば聞き上手な人が相手だと、口下手な人は「あの人とならいつもよりうまく話せる」と感じ、普段より多くの言葉が引き出されます。海外で言葉が通じず困っていた人は、身振り手振りでも考えが通じたことで、より豊かなコミュニケーションを試みようとするでしょう。

聞き上手な人は相手に共感しながら理解しようと努め、心地いい人間関係を築こうとします。そうした「傾聴力」を高めるのは簡単なことではありません。まずは手始めに、相手の話に注意深く耳を傾けてみてはいかがでしょう。生きづらい時代だからこそ、人との交わりを大切にしていきたいと思います。

岩本 泰波(いわもと やすなみ)
1912年~(明治45年~)。熊本県生まれ。
埼玉大学名誉教授、文学博士。1937年龍谷大学文学部仏教学科卒業、1942年広島文理科大学哲学科卒業。埼玉大学他で宗教学や仏教学の研究・教育に携わる。親鸞と道元の宗教思想について多くの業績を残す。

<参考文献>
「心の底」、松村 明・三省堂編修所(2019年)『大辞林』第4版、三省堂、P978

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