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『高楠順次郎先生伝』で雪頂忌を振り返る|あの時、あの頃 武蔵野ヒストリア

多くの人から寄せられる敬慕の念は今も昔も

高楠博士が晩年好んで使われた署名 高楠博士が晩年好んで使われた署名

みなさんは「雪頂忌」をご存じでしょうか。本学院の創始者である高楠順次郎博士のご命日に、学院関係者および学生・生徒の代表者の方たちが墓前に集ってご法要と墓参をするものです。

令和5年度「雪頂忌」は、令和5年6月28日(水)に行われます。本サイトでは過去に「雪頂忌」の始まりをご紹介しましたが、今回は過去の雪頂忌がどのようなものだったのか、本学院2代学院長の鷹谷俊之先生が執筆された『高楠順次郎先生伝』を参考に振り返りたいと思います。なお、『高楠順次郎先生伝』には一回忌から十二回忌までの雪頂忌について綴られています。

六月二十八日は毎年梅雨の頃で、気候もよくないから、多少時期をずらせたならと思うこともあったが、季節が近づくとその気にはなれなくなり、正当を選んで今日にいたっている。それでも永く続けた故か、雪頂忌ファンともいうべき人もあって、この会合を楽しんで集る人も少くない。毎回三十人から五十人位集っている。昭和二十八年であったか、ちょうどその日が大風大雨で、道路が川になり、バスも不通状態を呈し、吉祥寺駅まで辿り着いた熱心家も、バスがないので、空しく引返した人もあったし、また、横なぐりの風雨で、会場へ濡れ鼠になって飛び込んで来た人もあった。

当初、雪頂忌に集まっていたのは高楠博士を直接知る関係者です。一体どんな高楠博士の思い出を語らっていたのでしょうか。高楠博士の教えや逸話を講話や書物でしか知らない私たちからすれば、何ともぜいたくな集まりです。高楠博士の語り尽くせぬ魅力が、これほどまでに「雪頂忌ファンともいうべき人」を集まらせたのでしょう。

雪頂忌は毎年本学院で行われていましたが、七回忌は築地本願寺で行われました。以下に記されている遺品の一部は、現在雪頂講堂1階ロビーで見ることができます。

七回忌は昭和二十六年にあたった。恰も夫人の十三回忌の年と合致したので、築地本願寺でこれを併修することになった。法要、講演、記念撮影、故人を偲ぶ会、遺品の展示等を行った。講演は門人の長井真琴博士、遺品は遺墨、印譜、唯識二十頌原稿、照我日誌、印度探見日誌、同上展覧会記事(原田淑人記)、海外渡航旅券(三・四)、反省会雑誌首巻、著作事蹟年表、英文南海帰寄内法伝、ハイデルベルヒ大学名誉博士賞状、布哇大学英文講義原稿、高楠家墓碑銘拓本、文化勲章、朝日文化賞、写真類等。
この日会衆の人人へ故博士辞世偈(写)の詩箋一葉ずつ贈呈した。しかし、この「全集」は到底出版する時機ではないとの結論を告白せねばならなかった。

『高楠順次郎先生伝』には七回忌に寄せられた献詠と電文も収録されており、遠くはハワイ大学からの弔文もありました。高楠博士はハワイ大学と東方学院からの招きに応じて昭和13年8月にハワイへ赴き、1年ほど特別講義を行っています。さらに各種団体の要請でハワイの島々に足を運び、仏教に関する豊富な知識を惜しみなく分け与えました。次の文章からは、かの地で精力的に活動していた高楠博士への称賛と尊敬の気持ちが伝わってきます。

この日、ハワイ大学教授兼哲学部長のチャールズ・ムアは弔文を寄せ、「高楠博士は日本文明と仏教哲学を代表してわれわれの大学に来った極めて著名な学者であった。わが大学のものは博士のごとき人を迎え得たことを今なお光栄と感じている。われわれは東洋の智慧である仏教の哲学と宗教並びに日本の思想などについて非常に多くのものを博士から学ぶことができた。東京における七回忌の法筵と同時刻に当地においても法要が行われるので、わが大学も最大の尊敬を払うために参詣することになろう。」との書翰が届いた。

最後に、高楠博士の人柄が垣間見える「師としての先生」を表した一節を紹介したいと思います。

先生の眼つきは非常に鋭く、初対面の人は先ずそれに威圧を感じ、先生と同列の人にはそれが高慢不遜とみえた場合もあろう。しかし、先生の心中はいたって親切であった。弟子の災難は自分のことのように奔走大いに力めて、その災難の除去に尽された。また、病気をしている弟子のためには下宿を訪問するとか、弟子の子供が高等学校に入学したのを祝ってやるとか、まことに繊細な心づかいをされた。

今から約100年前、仏教精神を根幹とした人格育成を理想に掲げ、本学の母体である武蔵野女子学院を設立した高楠 順次郎博士。雪頂忌を機に、その足跡を辿ってみてはいかがでしょう。

<参考文献>
鷹谷俊之(1957)『高楠順次郎先生伝』、武蔵野女子学院、p111、p115、pp121-122、pp125-126。

関連リンク:雪頂忌、学祖高楠順次郎博士を偲ぶ|あの時、あの頃 武蔵野ヒストリア

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