校友トピックス

書道ゼミ4年生がキャンパスの竹で竹筆作りに挑戦|武蔵野大学の今

自作の竹筆で卒業制作を披露

小村さんの卒業制作と竹筆 小村さんの卒業制作と竹筆

2023年1月16日~20日、武蔵野キャンパス1号館の学生ホールにおいて、日文・教育合同4年書道ゼミ主催「令和4年度 武蔵野大学卒業制作書展」が開催されました。

日本文学文化学科15名、教育学科5名、計20名がゼミの集大成として書き上げた作品を発表しました。数々の力作が並ぶ会場でひときわ目を引いたのが、日本文学文化学科4年生の小村耕平さんの自作の竹筆とその竹筆で揮毫した作品です。

コロナ禍でDIYブームとなり、モノづくりをする人が急増しました。しかし、卒業制作のために自ら竹筆を製作するという学生は、なかなかいないのではないでしょうか。

大学最後の春から秋にかけて竹筆作りとその書作品制作に打ち込んだ小村さんと、本学の教育学部教育学科教授で書道ゼミの指導教員である廣瀬裕之教授に、竹筆作りを中心に語っていただきました。

まず、小村さんに竹筆作りのきっかけや苦労した点などを伺いました。

紅雲台の庭に生えていた長い1本の竹を更に切断したところ 紅雲台の庭に生えていた長い1本の竹を更に切断したところ

――竹筆作りをしようとしたきっかけは何ですか。

昨年度、一つ上の先輩の卒展出品作を拝見し、その中に、初めて見る独特な線の竹筆で書かれた作品がありました。「書道」と言うと、私の中で獣の毛の筆を思い浮かべてしまいます。ですが、この時、竹筆を用いての作品を拝見し、力強い字や破筆に私は目を奪われました。そして、今までの「書道」=毛筆という固定観念が変わった瞬間でもありました。一度しかない卒業制作という機会に、私はどうせなら自分で竹筆を製作しこれで書を書いてみようと決意しました。

日本一の筆の産地・広島県熊野町の「筆の里工房」とZoomで研究室やゼミ・部など、全国の各大学の書道関係者を結び、直接対話できる一大イベントがあり、本学も書道ゼミと部で参加しました。熊野の筆作りの名人にも竹筆について質問することができ、ますます意欲がわいてきました。自らの手で作り上げることで、日本文化に親しみ、書としての芸術性を知ることができると思ったからです。

――竹筆作りで最も苦労した点は何ですか。

筆を作る上で最も苦労した点は、竹を叩く作業です。竹の表面を刃物で削り細くした後、槌を用いて叩きます。竹が太ければ太いほど叩く力は強くなり、時間もかかります。叩く力加減や時間次第で、筆の出来上がりが変わります。実際に時間をかけすぎて、失敗した竹筆が何本もあります。よりよい穂先を完成させるため、万遍なく、先端から同じ力で叩くことを意識しながら筆作りに取り組んできました。竹が太く硬い場合は、塩水に浸すことで柔らかくなり、叩きやすくなります。塩水を含んだ穂先は柔らかくなり、書きやすい筆質となります。

完成した竹筆 完成した竹筆

――竹筆作りと書道ゼミを振り返って、それぞれ特に印象に残っていることは何ですか。

竹筆作りを振り返り、印象に残っている点は、周りの方々の協力が大きかったことです。廣瀨先生からは、竹筆作りの名人である富山県の古州先生作の竹筆を見せていただき、研究を重ね、緻密な点や工夫された点をメモし、私の竹筆作りに取り入れていきました。三鷹市の国立天文台の職員の方々、本大学の総務課の職員の方々、造園師さんからは、竹を頂きました。周りの方々の協力がなければ、これらの竹筆を完成させることはできませんでした。

書道ゼミを振り返り、印象に残っている点は、自由な作品が認められるところです。

卒業制作では、漢字、仮名、漢字仮名交じりの書に取り組む学生もいれば、自ら詩歌を作り、それを書として書き上げる学生もいました。特に今年の卒業制作は、多様な書作品が提出されていました。得意なこと、興味のあることに積極的に取り組むことができるゼミであると思っています。

――卒業後は国語の先生になるそうですが、大学での学びでどんなことを活かしたいとお考えですか。

卒業後、国語の教員として、必ず毛筆や硬筆の書写の授業を行う場面があります。本学入学前に私が受けてきた書写の授業を思い返すと、先生の説明を聞いて、ただ黙々と書き進め、作品を完成させる授業ばかりでした。私は、この書道ゼミ(廣瀨ゼミ)に所属し、書写と書道両方の面白さや奥深さを知りました。毛筆だけではなく、竹筆作りを含めた授業を展開し、書道の面白さや奥深さを教育の現場で、一人でも多くの生徒が学ぶことができるような活動をしていきたいと考えています。そして、書写の授業を含めた国語の授業を通して日本文化に親しむとともに、芸術としての書道にもより多くの関心をもたせる取り組みをしていく覚悟です。

さて、廣瀬教授から見て小村さんはどんな学生だったのでしょうか。

小村さん製作の完成したばかりの竹筆2本を手にした廣瀬教授(左)と小村さん(右) 小村さん製作の完成したばかりの竹筆2本を手にした廣瀬教授(左)と小村さん(右)

――書道ゼミでの小村さんについて、特に印象に残っているエピソードを教えてください。

小村君は日本文学文化学科の学生なので、最初は、国語の教職をめざしつつ書にも親しむごく普通の文学少年だと思っていました。ある日、竹筆を作ってみたくなったといい、見よう見まねで自分で槌で叩いて作った竹筆を書道ゼミの時に持参しました。これをみてびっくり。聞くと三鷹の国立天文台に生えている竹を許可を得て頂き製作したといいます。最初のころは小さいものでしたが、初めてにしてはとてもよくできていました。

本学に赴任してもうすぐ30年になりますが、竹筆に興味を持つだけではなく自ら製作してみた学生は初めてであり非常にうれしくなりました。なぜならば、私も竹筆に実は非常に興味があり、かつて富山県砺波市に、大きく立派な竹筆や木筆を作る技を持たれた日本一の名人といっても過言ではない老齢の井波太子筆の作者・廣瀬古州先生がおられ、2008年にお会いしに行ったほどで、その竹筆は竹先を細く裂かれ、穂がとても長く筆状に絡み合い絶妙、見たことがないほど大きくその姿の見事さは忘れられません。老師の竹筆を得て、私もかつて書作品にしたことがあったからです。

せっかく作るのなら、小村君もこの竹筆作りの技に少しでも近づいてくれればと思った次第です。そして老師の竹筆を小村君に見せました。すると、小村君の中で情熱と負けん気の強さが噴出してきたのか、それから夏を経て秋に至るまでも何本も竹を槌で打ち、かつ大きな竹筆作りに教員採用試験直前も打ち込んでいるのでした。

――小村さんの竹筆作りのサポートをされたそうですが、竹筆作りの様子を教えてください。

小村君は手先が器用で、槌で竹を毛のように細く細かく裂く技術は修得したようです。叩きすぎての失敗作もありましたが、徐々に成功作が多くなりました。

そんな中、かつて古州先生の竹筆となる竹材を探し集めておられた方が「奈良・和歌山・岡山・千葉など日本各地の竹を集めに回り、先生に試していただきましたが、新しい竹であまりかたくてもいけないし、やわらかすぎてもいけない。竹の種類によって採取する最適の時期の時間差がある」とおっしゃっておられたことを思い出しました。関西方面まで行くのは遠いなあと思っていたら、小村君は、手で持つところの筆管が片手で握れ、竹の節と節の間ができるだけ長い、長鋒の竹筆製作に適した竹が、なんと武蔵野キャンパス紅雲台の庭に生えているのを見つけてきました。

さっそく一緒に事務室へ行きお願いして許可をいただき、大学の樹木や庭を管理してくださっている株式会社保谷園さんが来られる日に、その担当事務の方、小村君・私が、立会いの下で、太さの直径が約2.5センチメートル、長さが5メートルほどの竹1本を切っていただき、この竹をさらに筆にできる長さに何か所も切っていただきました。

長時間にわたり竹を叩いて、毛状に裂く力加減と方向が一番難しい作業工程です。強すぎると細くなる前に折れてしまいます。弱すぎると裂けません。これを何時間もただひたすら根気よく続けることが大切です。小村君は微妙な加減を試行錯誤しながら克服していきました。穂の根元の部分の裂き方とその整え方に、特に苦労したようです。

竹筆も卒業制作の一部(上から2本目の竹筆で「無功徳」を揮毫) 竹筆も卒業制作の一部(上から2本目の竹筆で「無功徳」を揮毫)

――書道ゼミではどんなことを学びますか。その特長を教えてください。

漢字・仮名-漢字仮名交じりの書など、書道のどの分野の創作でも古典臨書でもOK。また、装丁は、掛軸の連幅・長い巻子本・小品を張り込んだ折帖と多様。大きな文字にしたり、写経のように細字にしたり、詩歌などの書作品には、絵を顔彩で入れてもよいとしています。

1つのテーマを各自で決めたら、ずっと1年間そのテーマに向かって練習し完成させます。そしてその制作過程を記した制作ノート的な副論を提出していただいております。

これは、武蔵野大学書道ゼミにおいて頑張ったことが記された記録であり、ひとつの自分史となります。小村君の場合、自作の竹筆による書の掛軸作品を制作。竹筆の持つ独特な線質の雅趣を存分に発揮した作となりました。副論は「竹筆の製作過程」です。

――2023年3月に本学を卒業され、社会人としての一歩踏み出す小村さんに期待することは何ですか。

中学校の国語の教員になれてよかったね。国語をあらゆる角度から磨くと同時に、日本文化を大切にして次世代に伝え受け継いでいく人となってください。一つのものに集中して困難を乗り越え、結果を出すまで行なったという貴重な経験はきっとこれからの人生に大いに役立つことと思います。忙しくなるでしょうが、せっかく竹筆作りをマスターしたので、さらに立派な竹筆の製作を期待します。また、書の腕前もさらに向上させていってください。

小村さんの作品には、躍動感ある筆運びで「無功徳」(功徳の対義語、果報をあてにしないの意)と書かれています。その言葉の先にある見返りを求めることなく、ただ無心に善行を重ねることは、称賛を求めることなく、ただ無心に竹を叩いて竹筆を作り続けた小村さんの姿に重なります。今後の小村さんがどのような活躍をされるのか注目したいと思います。

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