校友トピックス

令和3年7月の聖語

静謐の聖語板に見出してきたこと

有明キャンパス正門、武蔵野キャンパス正門・北門に設置されている「聖語板」を覚えていますか?
先人のことばを月替わりに掲示しています。
在学時、何気なく見過ごした言葉、瞬時に腑に落ちた言葉、場面を具体的にイメージできる一文、また、思わずその意味を自身に問い掛けた経験はありませんか。
そして、1カ月間、朝に夕に目することで、じっくりと心に沁みこんでくる言葉がありませんでしたか?
今も変わらず、「聖語板」は学生に、教職員に、大学を訪れる人に静かに語りかけています。

7月の聖語

むずかしいことをやさしく やさしいことをふかく ふかいことをおもしろく

井上ひさし

今月は小説家、劇作家、放送作家とさまざまな肩書を持つ、井上ひさし氏の名言です。

この名言に続きがあるのはご存じでしょうか。井上氏が立ち上げた劇団こまつ座の公演雑誌『the座』に記した<呪文のように長い標語>です。※1

むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、そしてゆかいなことはあくまでゆかいに※2

初めての社外向けプレゼンテーション、携帯機器の操作説明、子どもからの何気ない疑問など、わたしたちは他者に「むずかしいことをやさしく」伝えたり、「やさしいことをふかく」考えたりすることに日々悪戦苦闘しています。つい専門用語を並べ立てたり、忙しいからとお茶を濁したりすることも、よくある話です。また、ネットコミュニケーションではうわべだけの知識で片付けようとする傾向があります。

人には、最初に出会った難しい事柄について、やさしく説いてくれる支え手が大切です。それに対して、伝えようとする側には自らの創造力や思考力が問われます。聞きかじった専門用語の羅列で伝えた気になるのではなく、物事への深い考察と想像力が備わってこそなのだと思います。

まずは周囲を見渡して、難しいことを誰もがわかる言葉で話す人や、深い考察をする人を手本にすることから始めてもいいかもしれません。この言葉を紡いだ井上氏の作品を観たり読んだりすることも、きっと言葉を伝えることの手がかりになるのではないでしょうか。

井上 ひさし(いのうえ ひさし)
1934年~2010年(昭和9年~平成22年)。小説家、劇作家、放送作家、文化功労者、日本藝術院会員。山形県東置賜郡小松町(現・川西町)生まれ。
1964年、放送作家として「ひょっこりひょうたん島」の脚本を手掛ける(共作)
1969年、戯曲『日本人のへそ』で演劇界デビュー
1970年、長編書き下ろし『ブンとフン』で小説家デビュー
1984年、劇団こまつ座を旗揚げ。座付作者となって自作の上演活動を行う
直木賞、平成16年度文化功労者、日本藝術院賞恩賜賞他、数々の賞を受賞。
日本劇作家協会理事、日本文藝家協会理事、日本ペンクラブ会長等を歴任。

<参考文献>
※1 桐原良光(2001)『井上ひさし伝』、白水社、pp343-344。
※2 井上 ひさし(1989)『the座』、こまつ座、pp.16-17。

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