各分野の専門家といっしょに、ふだんの講義よりもさらにアカデミックで、わかりやすくて、面白いコウギをお届け!「イドバタコウギ」は、聞けばちょっと誰かに話したくなる、新感覚 雑談型 講義ラジオです。
「先生の講義、思い出すなぁ」「後輩たち、頑張ってるなぁ」など、母校を懐かしく思い出しつつ、新たな知見も手に入る「イドバタコウギ」。さて今回のテーマは…?
保健師人生を決めた壮絶な出来事…
「平成元年に大変な虐待の親子に出会いまして、その事例がこの黄色い本の初めに登場するわけですが…」
今回のイドバタコウギのゲストである中板育美先生が指し示したその本のタイトルは『周産期からの子ども虐待予防・ケア ~保健・医療・福祉の連携と支援体制~(明石書店)』。
一体どんな事例だったんだろう?と、非常に気になりこの黄色い本を手に取ってみました。
「あのね。ママに頭を叩かれる時ね…」という書き出しに、これが4歳の女の子から発せられた言葉なのかと思うと胸が詰まります。
この本の著者である武蔵野大学看護学部学部長の中板育美先生は、保健師としても長年ご活躍されてきました。「この事例との出会いが私の保健師人生を決めました」と、この出来事以降、中板先生は「子どもの虐待」と向き合っていくことになります。
みんなの生活を支える「川上対策」
さて、皆さんは「保健師」というお仕事をご存じでしょうか?「看護師」と似ているけれど何が違うのでしょう?パーソナリティを務める文学部の内田恵美莉さんと青木萌々音さんも、そのあたりが気になっているようです。
「病気になった患者さんに医療を提供するのが『医療・看護』。それが川の流れの川下での出来事だとすると、川上で予防戦略を考えていくのが保健師」と中板先生。
「川上対策」という言葉、今回のイドバタコウギの肝となりそうです。
中板先生は「虐待は世代間連鎖することが多い。虐待されていた親は子育てがわからず自分がされたようにしか子育てができない。そうなるまでに10年20年という時間があったはずなのに、社会は手を指しのべたのか?」と疑問を抱き、親の支援に力を注ぐことを決意されます。
パーソナリティの内田さんは、虐待のニュースが流れるたび「こうなる前にどうにかできなかったのか」とやるせない気持ちになると言います。
青木さんは先に出た川の流れになぞらえ、「傷ついてしまった子どもが川下にいるとしたら、源流には『虐待することでしか愛情を示せない親』ってものがいて…」と続けます。
「親も心に抱えているものがある。そこに寄り添っていこうという感覚をこれから大事にしていこうと思いました。」と、改めて気を引き締めたようです。
冒頭の「黄色い本」には、他にも様々な事例が取り上げられています。このような悲しい出来事を少しでも減らすため、保健師の皆さんは今も川上で対策に奔走されています。
川上対策が必要なのは決して虐待に限ったことではありません。皆さんの心身の健康を維持するためにも川上対策は不可欠です。今回のイドバタコウギは「予防することの大切さ」を改めて考えるよい機会になるのではないでしょうか?
さて、中板先生ご登場の後編では、コロナ禍でのエピソードや保健師という仕事のこれからについてのお話を配信予定とのこと。こちらもお楽しみに!
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