幸せってなんだっけ?
朝8時30分の武蔵野キャンパス。
勢いよく水を噴き上げる噴水を横目に学生や職員が並木道を歩くいつもの光景。卒業生の皆さんも懐かしく思われるのではないでしょうか?が、その日は少し様子が違いました。
長靴を履いた学生が数名、噴水の底をデッキブラシで磨き上げています。
「何やってんのかな…」とぼんやりやり過ごそうとしましたが、やはり踵を返し話を伺うことにしました。
「あのーお写真いいですか…」とおずおず申し出るその横から「代表の山中です!」と、いかにも今どきの若者が爽やかに声をかけてくれました。耳元にはピアス。足元を見ると長靴。ピアス+長靴に爽やかさがトッピングされ、一瞬ひるみそうになる私。
話を聞くとウェルビーイング学部の学生だそう。
卒業生の皆さんは「はて?そんな学部あったっけ??」と思われるのも無理はありません。それもそのはず「ウェルビーイング学部」は武蔵野大学に2024年度から開設された新しい学部なのです。
今回の奉仕活動を企画したウェルビーイング学部1期生の山中空さん
「噴水を覗いたら、なんだか水が汚いなーと思って。この場所は幼稚園の子ども達も遊びに来るので、体に浴びても問題ないきれいな水にしたいし、心が洗われるような大学の象徴的存在にしたいなということで、ウェルビーイング学部1期生による初めての奉仕活動としてこの企画を考えて仲間を募りました」と山中さん。
アメージング!心の中までキラキラ美しくて感動すら覚えてしまいます。
そもそもウェルビーイングとは?
ところで、皆さんは「ウェルビーイング」ってご存じでしょうか?
武蔵野大学ウェルビーイング学部長であり「幸せ」の研究を行っている前野隆司先生のコラム「みんなのWELL-BEING」を拝見すると
ウェルビーイング(well-being)とは、幸せ、健康、福祉という意味です。日本語では幸せと健康と福祉は異なる意味の言葉のようですが、ウェルビーイングという言葉をよく見ると納得できます。Wellは「よい」、beingは「状態」。心と体と社会の「よい状態」がウェルビーイングなのです。
とありました。
なるほど。わたしが幸せならみんなも幸せ。みんなが幸せなら社会も幸せ。社会が幸せなら世界も幸せ。ということでしょうか?
学生たちの清掃の様子をしばし眺めていると「ここの汚れとれないなー」「パッションが足りてない!」と仲間に檄を飛ばしつつも、その顔は何だか楽しそう。毎日清掃して下さっている業者の方も「ここはこうやるんだよ」と指導しながらもほんのりと嬉しそう。それを見守る私も幸せな気持ちになってきた…!幸せのスパイラル。これがウェルビーイングってこと!?
ウェルビーイング学部 1期生としての取組み
もう一人の立案者。
栗谷浩輝さん
今回のこの企画、噴水以外の場所も清掃しているとのことで、山中さんと一緒に企画立案した栗谷浩輝さんも合流し、次なる清掃場所に移動します。
道中、栗谷さんに「新しく創設されたウェルビーイング学部になぜ入ろうと思ったのか」と聞いてみると「高校の卒論テーマがウェルビーイングだったんです。前野先生が学部長を務められる武蔵野大学のウェルビーイング学部で学びたいと思いました」とのこと。「ウェルビーイング」という考え方、最近は高校でも学ぶんだということに時代の流れを感じずにはいられません。
次なる現場は武蔵野キャンパス北側にあるテニスコート裏。2名の学生が落ち葉とゴミを拾っていました。武蔵野キャンパスはたくさんの木々に囲まれているので落ち葉を拾うのも一苦労。しかしそこにはすっかりキレイになった1本道ができておりました。「この木、杏らしいです」「おぉ初めて見ました」などとお話ししながら、さらに次なる現場に向かいます。
第一体育館前到着。リヤカーを引く学生2名がゴミ回収の場所を清掃業者の方に確認しています。広いキャンパスのあちらこちらにゴミ箱が設置されている訳ですが、毎日こうやって回収してくださる方がいるからこそ、いつもキレイな環境を保てているんですね。「ありがとうございます…」と感謝の気持ちをここでも抱きつつ、幼稚園側のゴミ回収に向かいました。
栗谷さん、山中さんによると「武蔵野大学の学生だけではなく、中高・幼稚園と世代を超えたグループを形成し、清掃する活動をしていきたいんです」とのこと。お掃除って充実感と達成感を味わえますし、何より必ず喜ばれます。喜ばれるのってやっぱり嬉しいですよね。世代を超えてそれを共に分かち合える。素晴らしい取組みです。
また、企業と連携しての清掃活動も視野に入れているそうで、今回のこの活動、学校の枠を飛び越えどうやら社会にまで広げようとしているようです。ちょっと待って。これってまさにウェルビーイングをデザインしているってことじゃないですか!?ウェルビーイング学部ってこういうことを学ぶ学部なのかと解像度がググっとあがったような気がします。
その日の夕方、授業終わりの16時40分。
噴水の横を歩く下校途中の学生たちが「なんか今日噴水掃除してたよ」「えーーー超きれいになってんじゃん」と口々に話している、その横で「心が洗われるような大学の象徴的存在としてちゃんと噴水が認識されている…」と私も小さく幸せをかみしめるのでありました…。
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