武蔵野マガジン

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地域の健康を守る|大和田光さん

文=菅野浩二(ナウヒア) 写真=本人提供、小黒冴夏

大和田光(おおわだ・ひかる)|株式会社クスリのナカヤマ

東京都出身。旧姓は高野。お茶の水女子大学附属中学校・高等学校で学んだあと、2022年3月に武蔵野大学の薬学部薬学科を卒業。5、6年次には室井正志先生の生体防御機能学研究室に在籍し、主に大腸菌を用いてヒトの免疫反応の仕組みについて研究を進めた。在学中に所属した軽音同好会ではチャットモンチー、パスピエ、KANA-BOONといったバンドのコピーをしていたという。株式会社クスリのナカヤマの就職面接では「飲食店やホテルでアルバイトをしていたので、接客が好きだということも話しました」

「患者さんと対話して、地域医療に貢献したい気持ちがあった」

母方の祖父とおじが医師で、祖母が薬剤師だった。子どものころ、開業医として働く祖父とおじの病院で、患者さんから慕われ感謝されている2人の姿がかっこよく見えた。いつしか自分も人の命に関わる仕事がしたいと思うようになっていた。

「私が薬剤師になりたいと思ったのは、患者さんと対話して生活を支え、地域医療に貢献したい気持ちがあったからです」

そう話すのは大和田光さんだ。2022年3月に武蔵野大学の薬学部薬学科を卒業し、現在は調剤併設型ドラッグストア事業のほか、介護支援や外販事業を手がける株式会社クスリのナカヤマで働く。神奈川県川崎市を中心に地域に根づいた店舗展開を行う会社の調剤薬局で、薬剤師として充実した日々を送っている。

武蔵野大学に入学してよかったと思うのは、豊富な学部がそろう総合大学だった点だという。医療系への興味やその知識にのみ縛られず、多様な考え方にふれられたと感じている。

特に印象的だったのは1年次に新入生全員で受講した「自己の探求」という講義だ。学部や学科の垣根を超えたクラスでグループをつくり、自分とは違う価値観を知ったり、4人のグループで協力して課題解決に取り組んだりする過程は、曰く「すごく楽しかった記憶があります」。他者の視点を借りることで、自己理解も深まった。

薬剤師をめざす学びに励むかたわら、大学生活も思い切り満喫した。大和田さんの顔がほころぶ。

「1年生から4年生まで、オープンキャンパスで薬学部を紹介する場の準備や企画運営をお手伝いして、とても楽しかったことを覚えています。薬学部の廣谷功先生に誘っていただき、仲のいい数人の同級生とで参加したのですが、その場には薬学部の1年生から6年生に加えて卒業生もいました。オープンキャンパスの合間に先輩の勉強の話や実際に働いている社会人の話を聞けたのは貴重な機会でしたし、人間関係や視野が広がった部分があったと感じています」

高校生のころからギターを弾いていたこともあって、サークルは1年次から軽音同好会に在籍した。約4年間、他学部の仲間たちと五つか六つのバンドを掛け持ちして、ギターボーカルやギターを担当。ギターをかき鳴らし、心を込めて歌う時間は掛け値なしに楽しかった。

わからないところがあれば勉強を教え合う環境が自然だった

武蔵野大学の薬学部薬学科には連帯感があった、という実感がある。大和田さんは「一学年に150人ぐらいしかいないので、みんなが友だちのようなところがあったんです」と振り返る。

「わからないところがあれば勉強を教え合う環境が自然で、放課後も問題を出し合うなどしていました。テスト前には大学が夜の9時まで使えたので、教室に残ってお菓子を食べながらみんなで勉強していましたね。確か2年生のときだったと思うんですが、漢方のもとになる生薬の写真を見てどういう薬効があるかを答えるテストがあって、みんなでカードをつくって必死に覚えたのはいい思い出です。それから、上級生が下級生に教える場もあって、私自身も3年生のときに1年生のサポートをしました。教えることで自分のなかで理解がより深まった部分はあったと思います」

3年次にはインターンシップを通して貴重な経験を積んでいる。2018年8月28日から30日までの3日間、株式会社田無薬品の調剤薬局に出向いた。インターンシップは店頭に立つのではなく、地域に根ざした薬局をめざす田無薬品の薬剤師から話を聴き、同時に自らの考えを掘り下げ、参加者同士でディスカッションなどをし、最終的には自分の意見を発表するといったかたちで行われた。田無薬品は全店舗で在宅医療にも関わっており、そうした現場を知るなかで、以前から抱いていた「患者さんと対話して生活を支え、地域医療に貢献したい気持ち」はより強まった。大和田さんは言う。

「訪問介護員などとつながっている薬剤師の方もいて、他職種と連携しながら地域の健康を守る大切さを学べた3日間でした。病院の薬剤師は原則、関わるのは入通院の患者さんだけですが、調剤薬局であれば、地域の患者さんをより広く支えられる。そうした仕事に就きたい思いはさらに強まりましたし、地域密着型の調剤薬局で働く具体的なイメージも湧きました」

5年次には病院と調剤薬局で10週間ずつ実習を行った。実践の場でもやはり地域共生型の調剤薬局で働きたい思いが募ったという。吉祥寺に根ざした薬局の店頭に立った10週間では、調剤薬局の薬剤師は生活のアドバイスも求められている、という気づきもあった。足がよくつるという悩みがある女性に対して、「お水をしっかり飲んだり、足を温めたり、寝る前に足をマッサージしたりしてみてください」と自分の知識を伝えたときに深く感謝され、大きなやりがいを感じた。

仲間たちと一緒に勉強し、薬剤師国家試験で合格を果たす

5年次の2020年から2年ほどは、新型コロナウイルスの流行に見舞われた。感染拡大を防ぐために講義のほとんどはオンラインで行われ、不要不急の外出の自粛が呼びかけられた状況は就職活動にも影響した。もともとは5年次の前半にさまざまな薬局について調べ、検討するつもりでいたけれど、多くの合同企業説明会や会社説明会は中止となり、少し戸惑った。大和田さんが明かす。

「コロナの影響は小さくなかったです。ただ、大手の薬局は対策が早くてオンライン説明会をやっていたので、そういう場には積極的に参加しました。いろいろと話を聴くなか調剤薬局で働くイメージを固め、実習が終わった2月ころから本格的に就職活動をしました。就活エージェントにクスリのナカヤマを紹介してもらったのですが、面接では3年次のインターンシップで得た学びを生かして地域に根ざしたクスリのナカヤマで働きたいという点をアピールしました」

その熱意が伝わったのだろう、6年次に進級してほどなく内定の通知が届く。今度は薬剤師国家試験の合格をめざしてさらに勉強に励む日々が始まった。

国家試験対策は連帯感の強い仲間たちと行った。コロナ禍にあって放課後に学校に残って勉強したり、夜にWeb会議サービスを使って友だちと話し合いながら2時間ほど問題を解いたりした。教え合い、一緒に暗記するなかで、知識が定着していく実感があった。一人で勉強するより効果的だったと感じている。6年次が終わる2022年2月には第107回薬剤師国家試験で合格を果たすことができた。

クスリのナカヤマで働き始めて4年目。一日に40人前後の患者さんと接する忙しい店舗ではいつも患者さんが待っているけれど、一人ひとりと丁寧に向き合い話をするように心がけている。処方箋の内容に沿って必要な医薬品を正確な数だけ取り出す業務は医療事務の担当者が行ってくれるから、その間に対話を通じて患者さんとの距離を縮めていく。話をするなかで疑問や不安な点がある場合に、薬剤師としての知識を生かして相談に乗ったりアドバイスをしたりすることで患者さんに感謝されたとき、特にやりがいを感じるという。

薬剤師として経験を積む過程で「患者さんと対話して生活を支え、地域医療に貢献したい気持ち」はさらに強まった。大和田さんの表情がきりりと引き締まる。

「将来的には地域に根ざした在宅医療にももっと関わりたいですし、より身近なところで地域の健康を守っていきたいです。患者さんの家を訪問して薬の管理を行うだけでなく、介護支援専門員や訪問介護員など他職種と連携することで、患者さんの生活をしっかりとサポートしてよりよくすることができる薬剤師をめざしています」

※記事中の肩書きは取材当時のものです。また、学校名は卒業当時の名称です。

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